Introduction Example 02尼崎だいもつ病院

地域包括ケアシステムの中核施設として介護、福祉までを一体化したサービスの提供をめざす
ベッドコントロールやスケジュール管理にBIツールやグループウェアを活用

尼崎だいもつ病院は、兵庫県立2病院の統合事業で移転した県立尼崎病院の跡地利用事業として、社会医療法人愛仁会が請け負い2016年5月に開院しました。同院は、統合で新たに誕生した高度急性期病院の県立尼崎総合医療センター(尼崎市東難波町、730床)の後方支援を中心に、地域包括ケアシステムの中核として、医療と介護、福祉を一体的に提供する役割を担っています。同院を運営する愛仁会では、グループ内の急性期病院において富士通の電子カルテシステム「HOPE EGMAIN-GX」が導入されていますが、今回、新病院の開院と同時に電子カルテシステムに「HOPE LifeMark-HX」を採用し、BIツールでデータベースから横断的に情報を取り出して、ベッドコントロールやスケジュール管理など積極的に活用しています。

Background導入経緯

将来のビジョンを総合的に判断してHOPE LifeMark-HXを選択

貴院の特徴をお聞かせください。

田渕氏
阪神大物駅前にあった県立尼崎病院の跡地利用事業では、高度急性期病院である県立尼崎総合医療センターの後方支援と、当地での医療・介護・福祉を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が求められました。そこで、医療としては旧施設を改修して回復期リハビリテーションおよび地域包括ケア病棟を中心に199床とし、介護・福祉では、新たに介護老人保健施設(100床)とサービス付き高齢者向け住宅(60戸)を隣接地に建築中で2017年春に開設予定です。これらの施設を中心に在宅医療も含めて、これからの日本の医療の形である介護と一体となった医療を展開していきます。
井内氏
愛仁会グループは、関西地区で周産期医療から始まった千船病院、高槻病院、明石医療センターなどの急性期病院のほか、リハビリ専門病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションなど医療・介護・福祉を包括したサービスの提供を行っています。今回の事業では、当法人がこれまで培ってきた地域へのトータルヘルスケア提供のノウハウを生かしながら、県立の急性期病院との連携、高齢者住宅を含めた介護、福祉の提供など、次のステージに向けた新しいモデルの構築という意義もあると考えています。

新病院でLifeMark-HXを選択した理由を教えてください。

井内氏
愛仁会の3つの急性期病院では、HOPE EGMAIN-GXを導入しています。尼崎だいもつ病院では、グループ内で異動するスタッフも多く、操作の継続性なども考慮して、当初はEGMAIN-GXを導入する予定でした。しかし、新たにLifeMark-HXが発売され、クラウドにも対応したネットワーク型、Webアプリケーション化などのコンセプトが、愛仁会が当院で展開する新しいビジネススキームとも合致すると判断して導入を決定しました。
田渕氏
医療、介護、在宅を一貫したサービス提供のためには、最終的には、その地域において“1患者1ID”による横断的な情報共有が必要になります。LifeMark-HXでは、そういったシステム間の柔軟な連携も期待しています。

1回目のリハーサルが問題点の洗い出しにつながった

導入作業はどのように行われましたか。

渡邊氏
構築期間は、2015年8月から8か月間でした。グループ内の各施設から来たスタッフは、それぞれやってきた運用が違いますので、それを一つに決めていく詰めの作業は難しい仕事でした。当初、スタッフには「今までと同じでしょ」といった感覚がありましたが、最初のリハーサルを行ったところ、そこで出た450の問題点の半分以上が運用の課題であることがわかりました。これをきっかけとして、スタッフの意識が運用統一に向かい、システムの稼働がスムーズに行えました。

Benefits導入効果

BIツールを活用してベッドコントロール

LifeMark-HX導入のメリットはありましたか。

井内氏
LifeMark-HXでは、診療データベースが統合され、DWHに関しても院内のさまざまなデータベースを統合的に管理できます。さらに標準搭載されているBIツールを使って、必要な情報をリアルタイムにまとめて取り出せます。BIツールは、さまざまな部署にまたがる情報を収集し、一つにまとめて取り出せるのがメリットで、そのような作業が必要となる場面で、いろいろと活用しています。その一つが、ベッドコントロールです。
田渕氏
毎日多職種による入退院カンファレンスを行っています。従来は、必要な情報を印刷したり、画面で見たりしていましたが、LifeMark-HXでは、BIツールで必要な情報を抽出して統合し、一つのデータとして参照できます。ほぼリアルタイムで情報を一覧で確認できるので、的確で無駄のないベッドコントロールが可能になっています。
渡邊氏
入退院カンファレンスでは、患者IDや重症度、紹介元などのデータが必要になりますが、入院オーダなどの電子カルテの情報のほかに、必要な情報はテンプレートを作成して入力できるようにしました。それらのデータをすべてを取り出すことができます。複数のExcelなどで作成していたことを考えると、業務効率の向上と転記ミスなどのリスク低減にもつながっています。

多職種カンファレンスなどの時間調整をより効率的に

BIツールはそのほかにも利用されていますか。

田渕氏
チーム医療が不可欠になり、多職種カンファレンスや患者さんの面談などで、各スタッフのスケジュールを調整するのが大変でした。LifeMark-HXでは、電子カルテの診療予約などのオーダの時間情報と、医師など各スタッフの出張などをグループウェアに入力し、それらがDWHに統合されるので、その情報をBIツールで収集し、アウトプットはSharePointよりExcelマクロを起動することで一目でわかるようになりました。これによって、医師やセラピストなどの予定を確認しながらリハビリの時間を設定したり、空き時間にカンファレンスを設定することが可能になり、大幅な業務改善を達成しています。

部門ごとにもBIツールでさまざまな指標を作成

各部署ごとのデータ活用にもBIツールは使われているのでしょうか。

渡邊氏
リハビリ科や栄養科、放射線科、医事課などの各部署で、月ごとの集計データがワンクリックで出せるようなプログラムをつくってあります。
井内氏
グループの理事会で使う、売上管理の資料なども、BIツールでつくります。各部署には、ある程度基本的なデータが簡単に取れるようなプログラムを用意してあります。そこにもう一つ別の項目を追加したい、アレンジしたい場合は、各部署で対応してもらっています。最初からすべて現場でやれと言うのは難しいのですが、基礎をつくっておけば、それを編集することは各部署でもできます。

Prospects将来展望

HumanBridgeを介し、隣接する介護施設との情報共有を予定

今後のLifeMark-HXの活用についてお聞かせください。

田渕氏
来春開設予定の介護施設とは1患者1IDで統一し、HumanBridgeを介して、介護システムと電子カルテの間でお互いに情報を共有する予定です。また、この阪神北南医療圏には、県立尼崎総合医療センターも参加している、7市1町をつないだ「h-Anshinむこねっと」という地域医療ネットワークがあります。ここもHumanBridgeを採用していますので、将来的にはわれわれも参加して、地域全体で情報共有できればいいと考えています。地域連携は、まず情報の共有から始まりますから。
井内氏
電子カルテシステムへの投資は、医療機関としては大きな金額になりますので、各施設の目的に合った機能やシステムが実現できるかを判断して導入することが大事だと思います。当法人では、DWHでのデータ収集と解析を行っていますが、LifeMark-HX ではより柔軟で高度な解析も可能になると期待しています。ますます厳しくなる医療環境の中で、病院経営や運営のためのツールとして、今後も発展するLifeMark-HXに期待しています。

※『HOPE Vision』 Vol.25 からの転載